服姿の水兵

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だほうがいい


「これでおしまいなの?」ガリオンはあまりの簡単さに喜びの声をあげた。
「まだつづきがあるのよ、ガリオン。今度はシールドを大きくして皆を針灸治療おおえるようにしないと。ゆっくりやるのよ。一度に少しずつ」
 今度は簡単とは言いかねた。かれは紡いだイメージを何度となく破いた後、やっとのことでポルおばさんの望む大きさにまで伸ばすことに成功した。つづいてかれは、自分のイメー

ジとポルおばさんのイメージが出合うあたりが不思議と融合していくのを感じた。
「うまくいったみたいだわ、おとうさん」ポルおばさんは言った。
「だからガリオンならできると言っただろう」
 暗紫色の雲は不気味に渦巻きながらかれらのほうに向かっていた。先端に沿って雷がゴロゴロと轟いている。
「ベルガラス、もしあの灰theradome 香港の雨がニーサで降ってきたようなやつだとしたら、われわれは盲目状態で彷徨《さまよ》い歩くことになりますよ」バラクが言った。
「そのことなら心配はいらん。ここまで来ればラク?クトルへの錠をつかんだも同然だ。ああやって物事の場所を突き止めることができるのは、グロリムだけじゃない。さあ、先を急ご

う」
 かれらがふたたび尾根に沿って歩きはじめる頃、雲が上空をおおいはじめた。雷の衝撃は絶え間ない轟音を呼び、もくもくと沸き上がった雲の合間に稲妻が渦巻いた。小さな無数の

粒子が沸き返り、激しく逆巻きながら巨大な静電気の放電を繰り広げるたびに、稲妻はパ腦部發展チパチと乾いた音をたてた。やがて灰の雨の最初のひとひらが冷たい空気中に舞い降りてくる

頃、ベルガラスは一行を率いて尾根を下り、砂の平野に足を踏み出した。
 最初の一時間が過ぎようとする頃、ガリオンは前よりずっと楽にイメージを保てるようになっていた。初めのように常に意識を集中しておく必要もなくなった。さらに二時間がたつ

と、それは単調で退屈な行為以外の何物でもなくなっていた。退屈さを紛らすために、かれはどんどん濃くなる灰の雨の中を歩きながら、最初にこの荒野に入り込んだ時に出くわした

あの巨大な白骨体のことを思い出した。入念にその姿を思い浮かべると、今度は今抱いているイメージの真ん中にそれを置いてみた。全体的にはなかなかの出来だったし、何よりそれ

が暇つぶしになった。
「ガリオン」ポルおばさんのきびきびした声が聞こえた。「そんなに創造に夢中にならないで」
「えっ?」
「砂のことだけ考えてちょうだい。白骨体もいいけど、片側だけじゃおかしいわよ」
「片側?」
「わたしのイメージの方には白骨体はないの――あなたの方だけ。ややこしいことはしないで、ガリオン。装飾は禁止よ」
 むせかえるような灰が口や鼻に入らないよう顔をおおいながら、かれらは先を進んだ。ガリオンは何かが時折自分のイメージを押してくるのを感じた。それは、いつかファルドー農

園の池で捕まえたおたまじゃくしのような感触で、かれの心にくねくねとふれてくるようだった。
「しっかり、ガリオン」ポルおばさんの警告が聞こえた。「グロリムよ」
「見つかったの?」
「いいえ。ほら――通り過ぎてくわ」すると、くねくねした感触は消え去った。
 かれらは荒野に点在する砕けた石の山の中で夜を過ごした。ダーニクはまたしても石の山とテントの布を使って低い洞穴のような隠れ家をつくり出した。かれらは火を焚かずに、パ

ンと干し肉だけの冷たい夕食をすませた。ガリオンとポルおばさんは空洞になった砂のイメージを交代に抱き、傘のように皆の上をおおった。ガリオンは、動いていないときはイメー

ジを保つのがずっと楽なことに気づいた。
 翌朝目を覚ますと、灰はまだ降りつづけていたが、空は前日のように真っ暗ではなくなっていた。「すこし薄くなってきたようですね、ベルガラス」馬に鞍をつけながらシルクが言

った。
「もし灰が吹き飛ばされてしまえば、また巡察隊をかわさなくちゃいけませんね」
 老人はうなずいた。「うむ、急いだろう。実は隠れ場所にしようと思っているところがあるのだ――町の北約五マイルのあたりに。この灰がおさまる前に、そこに着い

ておきたい。ラク?クトルの防壁からは、東西南北十リーグは見渡せるからな」
「そんなに高いわけですか?」マンドラレンが聞いた。
「想像を絶する高さだ」
「では、ボー?ミンブルの城壁よりも高いと?」
「十倍――いや、五十倍はあるかもしれん。それは頭に入れておかなければいかんぞ」
 かれらは一日じゅう脇目もふらずに走りつづけた。ガリオンとポルおばさんは相変わらずイメージのシールドを保っていたが、グロリムの探るような感触は前よりも頻繁になってい

た。時にはおそろしく強い力で、何の前ぶれもなくガリオンの心を押してくることもあった。
「わたしたちの行動を見抜いているみたいよ、おとうさん」ポルおばさんは老人に言った。
「膜を突き破ろうとしてるわ」


だほうがいい

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